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オーディオ専用電源工事〜現実的な音質改善の方法〜
目次
電気が届くまでの道のり
私たちが普段何気なく使っている電気。
実は遠く離れた発電所から、20万〜50万ボルトという超高圧で送電線を通り、いくつもの変電所を経て段階的に電圧を下げながら届けられています。
電柱に届く頃には6,600Vとなり、最終的に柱上変圧器で100V/200Vに変換されて、ご家庭の照明やコンセントへと届きます。
▲ 柱上変圧器と配線の様子
オーディオマニアが追い求めるもの
オーディオを趣味とする方々は、常に「より良い音」を追求しています。アンプを替え、スピーカーを替え、部屋のレイアウトを見直し、RCAケーブルやスピーカーケーブルを交換し、高級電源タップを導入する……。
そして行き着く究極の選択肢が「マイ電柱」です。自前で電柱を建て、専用の変圧器を設置することで、近隣住宅からの電気的干渉を完全に排除できます。
しかし、マイ電柱の設置には約500万円という莫大な初期費用に加え、毎月の保安管理費という維持費がかかります。現実的ではありません。
そこで今回は、マイ電柱に頼らない、より現実的で効果的な電源環境の改善方法をご紹介します。

▲ 柱上変圧器(V結線)
なぜ「時間帯」で音質が変わるのか
オーディオ愛好家なら、こんな経験はありませんか?
- 夜になると音質が良くなる
- 雨の日はよく鳴る
- 朝だけは調子がいい
- 冬になると臨場感が増す
この現象には、ちゃんとした理由があり、要因は主に2つ考えられます。
1つ目は、近隣の電力使用状況です。周囲の住宅や工場で電気が多く使われると、細かいノイズや微弱な電圧変動が発生します。
2つ目は、柱上変圧器の温度上昇です。変圧器には「鉄損」と「銅損」という損失があり、これらが熱を発生させます。電力会社の柱上変圧器はJEC規格という特殊な規格で、最大140%までの過負荷運転を想定して設計されているため、一般的な変圧器より温度上昇しやすい特性があります。
変圧器が温度上昇すると、磁界変化が起こります。これこそが音質の敵なのです。
冬は周囲温度が低く、雨の日は冷却フィンが雨で冷やされ、朝は変圧器がまだ温まっておらず、夜は工場の稼働が止まり周囲温度も下がる——これが「よく鳴る」理由です。変圧器内の絶縁油が冷やされることで、磁界変化が抑えられ、澄んだ電気で音楽を楽しめるというわけです。
改善ポイント(1):引込み柱の見直し
ご自宅への電気の引込み方は、家が建った当時に電気工事店が電力会社へ申請し、その時の判断で決まったものです。
電柱の真下にある家もあれば、道路を横断して引き込まれている家、ワイヤーで空中分岐されている家など、条件は様々です。
築30年のお宅なら、引込み線も30年前のままということになります。
当時は数件しかなかった住宅も、30年経てば住宅密集地になっていることも珍しくありません。電柱からの配線は蜘蛛の巣状態となり、電気の質に影響を与えている可能性があります。
一度、ご自宅の引込み線を確認してみてください。引込み線の距離や、電柱の混雑状況、裏側に新しい電柱がないかなど。
道路拡張や造成で、意外と近い場所に新しい電柱が建っているかもしれません。変圧器により近い電柱から引込み変更することで、電気の質が改善する可能性があります。
改善ポイント(2):幹線ケーブルと分電盤の更新
しかしながら、ここだけは絶対に費用をかけていただきたいことがあります。
幹線ケーブルの更新です。
電線ケーブルはビニール被覆と銅線で構成されています。絶縁被覆は日々劣化し、銅は酸化して黒ずみ、伝導率が悪化します。ケーブルの寿命は20年未満と考えてください。
分電盤やブレーカー類も同様です。最新の分電盤は密閉構造になっており、酸化しにくい設計です。オーディオとの相性も良好です。

▲ 分電盤でR相・T相の電流を計測
改善ポイント(3):オーディオ専用配線
アンプ、プレーヤーなど、オーディオ機器それぞれに専用配線を設けることをお勧めします。
ここで重要なのが、R相とT相の使い分けです。
分電盤には3本の線で電気が供給されています。真ん中がN(ニュートラル)で、R相-N-T相という構成です。R相とNで100V、T相とNで100V、R相とT相で200Vを取り出せます。
オーディオ専用コンセントには澄んだ電気を供給したいので、
- 生活用電気(照明、エアコンなど)はR相に集中
- オーディオ専用はT相に接続
このように振り分けることで、オーディオを聴く時間帯に、生活用電気からの干渉を最小限に抑えることができます。

▲ 約1週間の計測結果(青:R相、黒:T相)

▲ 負荷をR相へ振り分け、T相にはオーディオのみ接続
改善ポイント(4):金属管による施工
天井裏に専用配線を引く場合、既存の配線と交差したり並走したりすることになります。
先述した「磁界変化した汚れた電気」は、屋内配線と干渉し合います。照明やコンセント、電話線、スイッチ線など、さまざまな配線と接触・並走することで、誘導ノイズが発生するのです。
これを遮断するのに有効なのが金属管です。
金属管で施工することで、誘導やノイズを完全に遮断できます。金属管には必ず接地アースを取り、ノイズや雑味を大地へ逃がします。

▲ 天井裏での金属管配線

▲ ラジアスクランプによる接地
改善ポイント(5):接地工事
金属管に帯びたノイズや雑味は、すべてアースを通じて大地へ逃がします。オーディオ機器本体のボディーアースも、必ず10Ω以下の接地を取ってください。

▲ 連結アースを打ち込み

▲ 接地抵抗6Ωを達成
こだわりのポイント
シールド入りケーブル
ケーブルはフジクラのシールド入りを使用しました。過去に施工した耐火ケーブルも良い結果が得られています。

▲ 純銅の棒端子(被覆は鉛筆そぎり剥き)
病院仕様のコンセントボックス
今回は、病院のレントゲン室で使用される特殊なコンセントボックスを採用しました。鉛で囲まれた構造で、外部からのノイズを徹底的にシャットアウトします。

▲ X線防護用アウトレットボックス

▲ 壁を開けてコンセントボックスを設置
今回の施工内容
- 引込みの変更
ガレージ側から約20mの引込みを、玄関側の変圧器に近い電柱(約10m)へ変更
- 分電盤の負荷電流調査と振り分け
R相・T相の使用状況を約1週間計測し、最適な振り分けを実施
- 金属管による専用配線工事
分電盤からオーディオルームまで金属管を敷設
- 接地工事
連結アースにより6Ωの接地抵抗を達成
お客様の声 福岡県大野城市 中村様邸
「我が家の使用状況を調べていただくところからお願いしました。
引き込まれている近隣の共有する電柱側を調べていただき、電流調査と変圧器の温度上昇時間などを計測。変圧器のR相側に負荷が集中していることがわかりました。
さらに我が家の電力使用状況も1週間計測したところ、オーディオルームで聴く時間帯にエアコンや食洗機などの負荷が重複していたことが判明。分電盤の接続を組み替えることを提案いただきました。
今までは普通にルームのコンセントから供給していましたが、勧められた金属管での専用配線に張り替えました。もともと100Ωだったアースも、打ち直して6Ωまで引き下げていただきました。」

オーディオ専用電源工事のご相談は、ぜひ麻生電設へお気軽にお問い合わせください。
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